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表1 医療効率査定表

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されているのみで、ほとんど医療は施行されていないという前近代的な状態である。これらの開発途上国の人々にいかにして医療および薬物投与を施行するかということは急務であり、全世界の医薬品や医療器具の4分の1前後を先進国の日、米、EC諸国以外の5分の4の人口が分け合っているという不平等がある。この点、薬品および医療器具依存の日本はいずれも世界の4分の1近い量を45分の1の人口で消費している。血液製剤に至っては、世界の供給量の90%を消費しているというのが現状である。

 

感染症の予防とQOLの改善

近代医療が国民生活のQOLの向上に最も貢献していたのは、前述の感染症の予防であろう。近代医療の発達は200年前のジェンナーの天然痘ワクチンの発見からといって過言ではないが、その20世紀のはじめに発見されたエーリックの化学療法、50年前のペニシリン発見から現在に至るまでの抗生物質の開発は、予防ワクチン開発とともに感染症の治療に大きく貢献した。エイズやヘルペス、そしてまたCMV(単核性巨大細胞ウイルス)や新しい未知のエボラウイルス等の予防治療薬の開発が望まれ、さらに抗生物質抵抗菌の出現はふたたび感染症再燃の危機に見舞われている。一方、天然痘の撲滅、ポリオ、麻疹の罹患率低下は特記すべきものである。
現在、がん等の悪性腫瘍の死亡率は、日米ともに早期発見、早期手術、化学療法、放射線療法等により著しく改善されたが、罹患率は人口老齢化により増加しているので、死亡率そのものの減少はあまり見られない。しかし、がん罹患患者に対するQOLは著しく向上しているし、ホスピスケアの浸透とともに、がん末期患者の予後およびQOLも改善されている。医療での治癒が不可能であれば、患者のQOLの改善は医療者の義務と考える。

 

老齢人口の増加とQOL

四半世紀の先進国における老齢人口増加で、日米ともに65歳以上の高齢者が全人口の13%を占めるようになった。2025年には日本は人口の23%が高齢者で占められ、労働人口との比率は現在の4対1から3対1となる。老齢者医療費も現在の35%から60%と増加することになり、年金および福祉費の増加とともに、老齢人口のQOLの維持が社会的問題として前面に立たされる。ことに疾病の多い75歳以上の老齢人口は日本は11%、米国は

 

 

 

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